雑記帳

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我が妄想 その8

最後の審判

 

ゴジラは ラッパを握り締めたままひっくり返っているミニラのそばに来た。

 動かなくなった息子をじっと見ている。

 ゴジラの目には涙があった。

 あまりにも軟弱な息子。

 火炎放射も満足に吐けない。

 肺活量を鍛えるために ラッパを買ってやったが、この息子には役にたたなかった。

 これが自分の息子か――

 情けなくて 涙が出る。


 ゴジラはミニラの手からラッパをとって、天に向かって5回吹いた。第7のラッパがなったとき、突然 黒雲が真っ二つに切れ、天に大きな穴が開いた。そこから、大天使ミカエルのイケメン軍団が白馬に乗って降りてきた。

彼らの姿を見たとたん、エバの目がハート型になった。エバの体が、ますます熱を帯び、1200度に近づいている。色気過剰欲求不満のエバの体は、イケメンを見ただけで極端に反応する。目がハート型に変わり、体中から妖気を帯びたフェロモンを発し、体が火照り、体内に熱がこもる。その体内温度が1200度を超えたとき、エバの内部でエクスタシー爆発をおこし、周りにあるあらゆるものをめろめろに溶かしながら、エバは消滅する。
これを<メロメロダウン>というが、科学の教科書には載っていない。

 すでに、エバの胸は熱で 溶け始めている。
 
 大天使ミカエルのイケメン軍団は、エバの上を数回 旋回し、投げキッスを送って 再び 天に帰っていった。イケメンたちから熱い投げキッスを送られ、エバのエクスタシーは爆発寸前である。

「何しにきたんだ あいつらは!!!」

 アンギラスが怒鳴った。
 
エバの胸が裂け、ハート型をした熱い火の玉が飛び出した。


「メロメロダウンが始まっている!」


 ゴジラが叫んだ。


「このままじゃ、地球も溶けてしまう! どうすればいいんですか!?」

 アンギラスゴジラに向かって叫び返した。


「方法はひとつだ、冷やすんだ。それしかない。私も 昔、そうされた」

「でも、どうやって冷やすんですか? ここには、超低温レーザーなんかないですよ」

「う〜〜〜〜〜〜〜ん」

 ゴジラが考えあぐねていると、誰かがゴジラの肩をちょんちょんとたたいた。振り返ると、それはドゴラだった。天から触手を伸ばしてゴジラを呼んだのだ。ドゴラは触手をゴジラの耳元にあてそっとささやいた。

「それしかないか」

 ゴジラがいうと、ドゴラの透明な体がポッと赤くなった。

「よし、わかった!ドゴラの案を採用する。アンギラス! 今から 全員 海に集めろ」

「海にですか?」

「時間がない、説明は後だ、とにかく海に集めろ!」

 

 

 

ゴジラ

 ゴジラの命令で、生き残った怪獣たちが、海岸に集合した。

「諸君! 時間がない。
エバのメロメロダウンが近づいている。メロメロダウンが起これば、この地球も消滅する。とめる方法はエバの体内温度が1200度を超えたら、冷却すること。それ以外にない。だが、われわれにはエバを冷凍する武器がない。諸君、今から、その武器を作る。海の水を腹いっぱい飲むんだ。出そうになっても我慢しろ。メロメロダウンが始まったら一斉にエバに向かって放出する!」
 レッツゴー!の掛け声で、全員、海の水を飲み始めた。

「ああ、もうだめだ。 膀胱炎になるぅ〜〜」 と誰かが言うと、

「がんばれ! もうすぐだ、がんばるんだ!」 といって、励ました。

「ドゴラ!!  エバの体温を測れ」

 ゴジラが天を漂っているドゴラに叫ぶと、ドゴラはその触手を伸ばして、エバの肛門につっこんだ。 ドゴラが触手を使って「1200」の数値を示した。
 エバの頭から、ボワッと炎が噴出した。

「メロメロダウウウンンン!!」

 アンギラスが叫ぶ。

「全員、大股全開! 全尿放出開始!!」

 ゴジラの命令で、ありったけの尿がエバに向かって放出された。

 真っ赤に焼けたエバの体から、蒸気が立ち上っていく。

アンモニア臭と焼き豚の匂いがあたりに充満している。

 エバの体は真っ白な蒸気で覆われ、「ブヒブヒヒヒヒヒヒヒィ」と断末魔の叫びをあげながら、エバは溶けていく。

 突然、エバの体が桃色に発光し、一筋の光が天を突き刺した。

 雷鳴がとどろき、激しい雨が降り始めた。

 エバの体に雨が降りかかる。

 エバの体は桃色の蒸気に覆われた。

 蒸気の中で、エバは「ブヒィ〜〜ン」と最期の咆哮を上げ、消滅した。

 

「終わった・・・・・・」

 ゴジラがつぶやいた。

 すべての尿を放出しつくした怪獣たちは その場にがっくりしゃがみこみ、ただ、呆然とエバが消滅した場所を見ている。

 そのとき、アンギラスガ叫んだ。


「長官!  フェロモン度数が異常な数値を示しています!」

 アンギラスは スクッと2本足で立ち上がり、体の下腹部に設置された自分のロケットをゴジラに示した。アンギラスのロケットの発射角度は90度を超えている。しかし、急激に発射角度が下がっていく。

 そのときミニラの体が桃色に光った。ミニラがエバのフェロモンを吸収しているのだ。
 突然、ミニラが立ち上がり、桃色放射火炎を吐いた。

ブヒィ〜〜ン

 ミニラの咆哮。

 アンモニアを含んだポイズンレインは次第に激しさを増し、ミニラの体内にしみ込んでいった。


(THE END)


最後まで読んでいただきありがとうございます。
※最終章は「ゴジラVSデストロイヤー」をパロディーにして書いてみただけで、今のところ、ミニラが復活する続編は予定していません。