最後の審判
ゴジラは ラッパを握り締めたままひっくり返っているミニラのそばに来た。
動かなくなった息子をじっと見ている。
ゴジラの目には涙があった。
あまりにも軟弱な息子。
火炎放射も満足に吐けない。
肺活量を鍛えるために ラッパを買ってやったが、この息子には役にたたなかった。
これが自分の息子か――
情けなくて 涙が出る。
ゴジラはミニラの手からラッパをとって、天に向かって5回吹いた。第7のラッパがなったとき、突然 黒雲が真っ二つに切れ、天に大きな穴が開いた。そこから、大天使ミカエルのイケメン軍団が白馬に乗って降りてきた。
彼らの姿を見たとたん、エバの目がハート型になった。エバの体が、ますます熱を帯び、1200度に近づいている。色気過剰欲求不満のエバの体は、イケメンを見ただけで極端に反応する。目がハート型に変わり、体中から妖気を帯びたフェロモンを発し、体が火照り、体内に熱がこもる。その体内温度が1200度を超えたとき、エバの内部でエクスタシー爆発をおこし、周りにあるあらゆるものをめろめろに溶かしながら、エバは消滅する。
これを<メロメロダウン>というが、科学の教科書には載っていない。
すでに、エバの胸は熱で 溶け始めている。
大天使ミカエルのイケメン軍団は、エバの上を数回 旋回し、投げキッスを送って 再び 天に帰っていった。イケメンたちから熱い投げキッスを送られ、エバのエクスタシーは爆発寸前である。
「何しにきたんだ あいつらは!!!」
アンギラスが怒鳴った。
エバの胸が裂け、ハート型をした熱い火の玉が飛び出した。
「メロメロダウンが始まっている!」
ゴジラが叫んだ。
「このままじゃ、地球も溶けてしまう! どうすればいいんですか!?」
「方法はひとつだ、冷やすんだ。それしかない。私も 昔、そうされた」
「でも、どうやって冷やすんですか? ここには、超低温レーザーなんかないですよ」
「う〜〜〜〜〜〜〜ん」
ゴジラが考えあぐねていると、誰かがゴジラの肩をちょんちょんとたたいた。振り返ると、それはドゴラだった。天から触手を伸ばしてゴジラを呼んだのだ。ドゴラは触手をゴジラの耳元にあてそっとささやいた。
「それしかないか」
ゴジラがいうと、ドゴラの透明な体がポッと赤くなった。
「よし、わかった!ドゴラの案を採用する。アンギラス! 今から 全員 海に集めろ」
「海にですか?」
「時間がない、説明は後だ、とにかく海に集めろ!」
ゴジラの命令で、生き残った怪獣たちが、海岸に集合した。
「諸君! 時間がない。
エバのメロメロダウンが近づいている。メロメロダウンが起これば、この地球も消滅する。とめる方法はエバの体内温度が1200度を超えたら、冷却すること。それ以外にない。だが、われわれにはエバを冷凍する武器がない。諸君、今から、その武器を作る。海の水を腹いっぱい飲むんだ。出そうになっても我慢しろ。メロメロダウンが始まったら一斉にエバに向かって放出する!」
レッツゴー!の掛け声で、全員、海の水を飲み始めた。
「ああ、もうだめだ。 膀胱炎になるぅ〜〜」 と誰かが言うと、
「がんばれ! もうすぐだ、がんばるんだ!」 といって、励ました。
「ドゴラ!! エバの体温を測れ」
ゴジラが天を漂っているドゴラに叫ぶと、ドゴラはその触手を伸ばして、エバの肛門につっこんだ。 ドゴラが触手を使って「1200」の数値を示した。
エバの頭から、ボワッと炎が噴出した。
「メロメロダウウウンンン!!」
アンギラスが叫ぶ。
「全員、大股全開! 全尿放出開始!!」
ゴジラの命令で、ありったけの尿がエバに向かって放出された。
真っ赤に焼けたエバの体から、蒸気が立ち上っていく。
アンモニア臭と焼き豚の匂いがあたりに充満している。
エバの体は真っ白な蒸気で覆われ、「ブヒブヒヒヒヒヒヒヒィ」と断末魔の叫びをあげながら、エバは溶けていく。
突然、エバの体が桃色に発光し、一筋の光が天を突き刺した。
雷鳴がとどろき、激しい雨が降り始めた。
エバの体に雨が降りかかる。
エバの体は桃色の蒸気に覆われた。
蒸気の中で、エバは「ブヒィ〜〜ン」と最期の咆哮を上げ、消滅した。
「終わった・・・・・・」
ゴジラがつぶやいた。
すべての尿を放出しつくした怪獣たちは その場にがっくりしゃがみこみ、ただ、呆然とエバが消滅した場所を見ている。
そのとき、アンギラスガ叫んだ。
「長官! フェロモン度数が異常な数値を示しています!」
アンギラスは スクッと2本足で立ち上がり、体の下腹部に設置された自分のロケットをゴジラに示した。アンギラスのロケットの発射角度は90度を超えている。しかし、急激に発射角度が下がっていく。
そのときミニラの体が桃色に光った。ミニラがエバのフェロモンを吸収しているのだ。
突然、ミニラが立ち上がり、桃色放射火炎を吐いた。
ブヒィ〜〜ン
ミニラの咆哮。
アンモニアを含んだポイズンレインは次第に激しさを増し、ミニラの体内にしみ込んでいった。
(THE END)
最後まで読んでいただきありがとうございます。
※最終章は「ゴジラVSデストロイヤー」をパロディーにして書いてみただけで、今のところ、ミニラが復活する続編は予定していません。