10年ほど前、小説サークルに入っていました。
ホームページに作品を載せていましたが、そこが突然サーバーダウンしたのか原因わからず使えなくなりました。
それでここへ過去作を持ってくることにしました。
このブログは作品倉庫になります。
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太陽の匂い」
パソコンも携帯電話もなかったころ、子供たちのいる場所には特別な匂いがありました。それは、決して良い香りではありません。その匂いから浮かぶ色は、からからに乾いた砂漠の褐色。照りつける太陽のせいでたくましく鍛えられた男の色です。
砂漠にはたくましい男が似合う、と思うのは、デビット・リーン監督の映画『アラビアのロレンス』の影響が大きいと思いますが、子供たちの発する匂いから―― そこにいるのが女の子だけのグループだったとしても―太陽の下で育てられた男性的なものを連想します。
私の友人は「子供のそばにいるとゴムが焦げたようなにおいがする」といいました。確かにそのような臭いを感じることもあります。
時々、春の庭で草むしりをしていると、湿った土から子供たちと同じ匂いを感じることもありました。ひんやりとした黒っぽい土を見ても、その匂いから浮かぶものは、太陽の黄色に染められた砂漠の風景です。
今から数年前の夏、剣道指導者としてキャンプ合宿に参加したときだったと思います。
私の隣に座った男の子から子供だけが持つ特別な臭いを感じました。
『これは太陽の匂いだ』
突然、何の根拠もなく、そう思ったことを覚えています。
しかし、悲しいかな、最近では子供たちが集まっている場所に行っても「太陽の匂い」を感じなくなりました。それどころか、どんな匂いも感じません。
ここに、数十年前に書いた詩があります。その頃はまだ、いろいろなところに太陽の匂いがありました。
『布団干し』
ほかほかほっくり
きもちがいいね
おひさまのひかり
いっぱい いっぱい
すいこんで
ママ このおふとん
たいようのにおいがするよ